アスペクトは、言語間の形態的差異が見られ、普遍性と個別性が共存する興味深い言語現象であり、言語習得研究の観点からも大変興味深い領域である。しかし、その領域の第二言語習得には様々な要因(普遍性、母語の影響、インプット)が絡み合い、習得の困難さを訴える外国語教師・学習者が多いのも現実である(稲垣2011)。稲垣によると、中国語話者は母語の影響により日本語の結果状態を表すアスペクト形式「テイル」を使うべき時に「た」を使いやすく、結果の状態の「テイル」の習得が遅れるそうである。さらに、稲垣は、許(1997)と小山(2003)の習得調査の結果を根拠として、中国語話者が「了=た」、「在=ている(動作の持続)」、「着=ている(結果の状態)」という対応を認識すると考えれば、これは到達動詞と「た」の結びつき、活動動詞と「ている」の結びつきより強める方向に働き、結果として、結果の状態「ている」の習得が動作の持続「ている」の習得に比べいっそう遅れることになると説明している。
稲垣(2011)では、許(1997)のデータを使い、結果の状態「ている」に関して正答率が低かったほか、動作別の違いも見られると述べている。正答率の高い動詞は中国語において状態を表す「着」が「ている」に対応しているもので(例:“車停着”/「車が止まっている」、“電灯亮着”/「電気がついている」)、正答率の低い動詞はその対応関係がなく、中国語では完了の「了」がもちいられるものである(例:“人死了”/「人が死んでいる」、“太陽出来了”/「太陽が出ている」)。また、それらの動詞の誤用のほとんどは、「ている」の変わりに過去の「た」を用いたもの(死んだ)であった。また、稲垣と許は、中国語話者が「着」が「ている」(結果の状態)と対応し、「了」が「た」と対応していると認識しているため、このような動作別の違いが現れると推測している。
しかし、稲垣(2011)では、中国語話者がどのような基準をもって、動詞が「状態を表す」か「完了を表す」かを判断するのか、このような日本語アスペクトの誤用は、中国語のアスペクト体系の性格とはどんな関係があるのかについて触れていなかった。そこで、本稿では、実際に中国語話者を対象に日本語アスペクトにおける誤用調査を行い、その結果を基づいて誤用の傾向、原因を分析することを目的とする。また、先行研究を踏みながら、日中アスペクトを比較し、中国語話者が日本語を勉強する際のアスペクトについての問題点を明らかにしたい。
また、井上優・生越直樹・木村英樹(2002)では、中国語において、動詞のアスペクト形式選択に直接関与するのは動詞句が表す事象の三つの<形>(<開いた線>、<閉じた線>、<境界>)である。このような概念とした形を、中国語アスペクト標識(動詞接尾辞)“了”(完了)、“着”(維持)で具現化する(“了”:<閉じた形(閉じた線/境界)>、“着”:<開いた形(開いた線)>)。文法範疇としてのテンスを持たない“了/着”は、純粋に事象の<形>の表現であり、本質的に<時間>の表現である日本語のアスペクトとは基本的な性格が異なると述べている。
下地(2011)では、日本語と対照するため、中国語の動詞接尾辞“了”を完成相、“着”を継続相の形式と認めている。その上、日本語のアスペクト形式選択には、出来事をどこから見ているか、という視座が深く関わっているが、中国語のアスペクト形式選択は、出来事のどこを見ているか、問いう注視点が深く関わっていると指摘している。
资料编号:[285444]
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